体の仕組みや変化のプロセスについてもわかりやすく丁寧にまとめています!
お子さんと一緒にご覧ください。
なお,このページでは次の言葉が出てきます。
[ 乳腺,エストロゲン,プロゲステロン,陰毛・わき毛,脱毛,初潮,月経,月経周期,子宮内膜,ボディ・イメージ,自尊感情]
※注意点:下に書いてある様々な体の変化は,人によって出現するタイミングや変化の早さ,程度に違いがあります。
体の変化
思春期に胸がふくらむ理由とは?乳腺のしくみとホルモンの働き
胸がふくらみ始めるのは大体10歳前後。その後5年ほど成長を続けると言われています。人によっては中学校に入る前から少しずつ胸が膨らんできていることでしょう。
さて,胸(乳房)についてちょっと詳しく見てみましょう。

乳房は,乳腺という乳汁をつくる組織と脂肪からできています。つくった乳汁は乳首から出てきます。

乳房の中を見てみるとこんなふうになっています。図ではピンク色に塗っているぶどうの房のような小葉(腺房という小さな袋がいくつも集まって小葉ができています)と小葉と乳首に繋がっている道のことを乳管と言います(小葉と乳管を合わせて乳腺と言います)。
小葉で乳汁をつくり,つくった乳汁は乳管を通って乳首から出てきます。
思春期になって胸が大きくなるのは,女性ホルモンの1つであるエストロゲンが分泌されて乳管が発育すること,そして女性ホルモンのプロゲステロンの分泌によって小葉が大きくなることが影響しています。
つまり,乳腺が発達することで胸が大きくなっているのです。
ちなみにエストロゲンとプロゲステロンは,卵巣でつくられています。
思春期に始まる毛の変化と脱毛への関心|知っておきたい注意点とは?
陰毛やわき毛が生え始めるタイミングはまだわかっていませんが,胸のふくらみ→陰毛の生え始め→初潮→わき毛の生え始め,といった順番に成長の変化がおとずれます。
中学生になると,”気になるから”,”女性のマナー”としてわき毛やすね毛などの脱毛をし始める子が多いようです(参考1)。また,おしゃれの一環として男子より女子にこのような脱毛への意識が強まっているようです(参考2)。
もしお子さんが脱毛について話してきた時には,すぐに行動せずに,注意点の内容のことを考えてから行動してみるといいと思います。
※参考1・・・調査レポート・実践女子大学 人間社会学部・実践「ペルソナ」研究会.実践『ペルソナ』通信 (No.26)「実践女子大生の脱毛」に関する調査結果
※参考2・・・大久保香梨.小中学生のおしゃれに関する研究 : 主におしゃれ障害に関して.茨城大学教育学部紀要 (教育科学) (63), 219-230, 2014
- 脱毛の方法によっては皮膚トラブルが発生する
- 脱毛グッズの購入トラブルも多く発生している
- 脱毛をする・しないについて意見はさまざま
「脱毛したいんだけど…」と子どもが話しかけてきた時,「そんなのまだしなくていい」等と会話を避けてしまうことで,子どもが相談なしに行動してしまってトラブルに遭ったり,自分の体へネガティブなイメージをもってしまうかもしれません。
子どもたちの考えに対して,すぐに否定したり注意することは避けて,彼女たちのその思いの裏にはどんな考えや願望があるのか,丁寧に耳を傾けてみてください。
思春期に皮下脂肪が増える理由|初潮や月経に必要な体脂肪率とは?
中学生の女子の多くは望んではいないかもしれませんが,女性ホルモン(エストロゲン)のはたらきによって,皮下脂肪が蓄積されやすくなります。
皮下脂肪はお尻や太ももにつくため,その結果,丸みのある体つきになっていきます。
しかしこの皮下脂肪!女性の体にはとても重要な働きをするのです。
- 正常な性機能を整え,維持するためには皮下脂肪が重要
- 初潮*には体脂肪率20%弱が必要(参考3)
- 正常な月経周期ができあがるためには体脂肪率20%強が必要
*初潮とは…最初の月経があること
※参考3・・・Frisch,R.E.Menstrual cycles: fatness as a determinant of minimum weight for height necessary for their maintenance or onset(1974).Science,949-951.
非常に激しい運動やトレーニングをして体脂肪が極端に減ってしまうと,初潮の遅れ,月経の異常が起きてしまいます。
もし15歳になっても初潮がこない,あるいは,初潮がきたがその後3ヶ月以上月経がこないなどの状態があれば,体に何らかの異常が起きている状況です。
実は、体重が減りすぎると月経が止まることがあるのですが、体重が戻ると再び月経が始まることがわかっています。
もし栄養が不足して月経が来ないという場合には、身長に合った最低限の体重と、体にたくわえた脂肪が必要になるのです。
16歳以上で月経が止まった人は、初潮のときよりも少し多めの体重がないと月経が戻りにくいこともあります。
女の子は初潮から18歳頃までに、自然に脂肪が増えていくのが普通です。
女性の体は、排卵や月経をきちんと起こすために、一定量のエネルギー(脂肪)をたくわえておく必要があるのです。
月経と月経周期
月経とは?出血のしくみと子宮内膜の役割をわかりやすく解説
月経とは、子宮の内側にある子宮内膜という組織の表面が、はがれ落ちて体の外に出てくる現象のことをいいます(子宮内膜の説明は、下の「子宮内膜ってなに?」を見てみましょう)。
多くの人は、月経では「血液だけが出てくる」と思うかもしれませんが、実は、血液と一緒に、はがれた子宮内膜のかけらも出てきているのです。
そのため、月経のときには、サラサラとした血液だけでなく、ちょっとドロっとしたものや、かたまりのように見えるものが出ることがあります。
でもこれは異常なことではなく、はがれ落ちた子宮内膜なのです。

月経による出血は、2日〜7日くらい続くのが普通です。
多くの場合、月経が始まってから2日目あたりが、もっとも出血の量が多くなります。
出血する量は、1回の月経全体でおよそ30mLほどが平均的ですが、
人によっては15mLくらいの少ない量のこともあれば、80mLくらいの多い場合もあります。
また、同じ人でも、月経のたびに出血量が少しずつ違うこともよくあります。
これは体調やホルモンバランスの影響を受けるためで、特別な異常ではありません。
月経周期とは?平均日数と子宮内膜・卵巣で起こる変化をわかりやすく解説
月経周期とは、月経による出血が始まってから、次の出血が始まるまでの一定の期間のことをいいます。
多くの人では、1回の周期がおよそ28日くらいですが、25日から38日くらいの間隔でやってくるのが普通です。
この1つの周期の間には、子宮の内側にある子宮内膜や、卵巣の中で、決まった変化が順番に起こります。
そして、この変化は毎月、くり返し起きる仕組みになっています。
子宮内膜や卵巣の変化についてはこちらで詳しく説明していますので,ご覧ください。
月経周期のくわしい解説
子宮内膜ってなに?なんではがれるの?
月経とは、はがれ落ちた子宮内膜と血液が体の外に出てくる現象でしたね。
では、そもそもなぜ子宮内膜ははがれ落ちるのでしょうか?
これを理解するためには、まず子宮内膜がどんな役割をしているかを知る必要があります。
みなさんは、どんな役割をしているのか知ってるかな??
全然大丈夫ですよ。
ここから、少しずつ知っていきましょう。
子宮内膜は、赤ちゃんのもとになる受精卵を育てるために作られる、特別なベッドのようなものです。
「受精卵がある場合」と「受精卵がない場合」では、子宮内膜の働きが違ってきますので、それぞれの場合ごとに説明していきます。
【受精卵がある場合】
男性のペニスから出た精子(せいし)と、女性の卵巣から出た卵子(らんし)がくっつくと、受精卵になります。どちらも、赤ちゃんの元となる細胞で、赤ちゃんをつくるためにあるのです。
どうやって受精卵ができるのか。性行為から受精までをわかりやすく解説
受精卵は、子宮の中で自然に成長を始めます。

受精卵は子宮の中をただ転がっているわけではなく、
子宮内膜にぴたっとくっつき、内膜からたくさんの栄養をもらって育ちます。
そして受精卵は、何もしなくても細胞分裂を繰り返し、どんどん人間の体へと成長していきます。
人間の体へと成長していくために、子宮内膜には血管がたくさん張りめぐらされ、栄養分がたっぷり蓄えられているのです。
【受精卵がない場合】
もし受精卵がつくられなかったり、子宮内膜にくっつかなかった場合、子宮内膜にため込まれた血液や栄養は使われることがありません。
けれど、血液にも寿命があるため、古くなった血液をそのまま子宮内膜の中にためておくことはできません(赤血球の寿命は約120日、血小板の寿命は7-10日、白血球の寿命は種類によって違うけれども、数時間から数か月)。
このとき、ホルモンのはたらきによって、子宮内膜が子宮の表面からはがれ、血液と一緒に膣(ちつ)を通って体の外に出る──
こんな仕組みで月経が起こっていたのです。
子宮内膜がはがれるときに子宮がギュッと収縮して体の外に押し出すときに子宮が収縮するので、生理痛と呼ばれる痛みが出てきます。
ボディ・イメージ
ボディ・イメージってなに?
ボディ・イメージというのは,
- 自分のことはどんなふうに見えるのかというイメージ
- 他人には自分はどんなふうに見えているのかという,他人の中にいる自分を発見すること
と考えられています。
中学生の女の子は,このような自分の体に対するイメージが強くなります。
それは,この時期(思春期)にたくさんの体の変化があり,その変化を自分が認識すること,また一方で,友だちの体の変化が目に入るからです。
ボディ・イメージに影響することってなに?
さらに,インターネットやSNS(instagramやTikTokなど)で目にするモデルやインフルエンサーの体と自分を比較して,自分の体に不満を持つこともあります(参考)。
こういった,女の子が自分自身の体へのネガティブなイメージをもち,いき過ぎたダイエットにつながらないようにすることが思春期には大切です。
標準的な体型にも関わらず,「まだ太っている」「やせなくちゃ可愛くなれない」「自分の体型がキライ」という気持ちが強まりすぎると,食事をしないようになったり,心身ともに不健康になってしまいます(参考)。
思春期は,女性ホルモンの働きにより,乳腺や子宮内膜の成長や増加が起こる大切な時期です。女性ホルモンの分泌が不規則になったりしてホルモンバランスが崩れることをなんとか避けていきたいですね。
家族で朝食をとることの多い女子中学生は,そうではない女子中学生に比べて,自分自身に対する満足感(自尊感情)が高くなっていたり,家族と一緒に生活することの満足感も高くなっているようです(参考)。
そのような関係性を作り,そして続けていくことが,中学生の女の子の体や健康にとても大事なことになります。