現在およそ40歳前後の方にとって,「性教育」といえば,中学や高校の時に,外部講師として助産師さんが来てくださって命の大切さについて教えてくれたり,保健体育の時に二次性徴や避妊や性感染症予防について講義を聞くことだったと思います(私の経験からそうではないかと想像しています)。
しかし現在の性教育は,その内容や学び方が少しずつ変わってきています(変化にも紆余曲折会ってなのですが,それについてはまた別の機会に)。
正確には,すでにある外国で行われている性教育が,日本に入りつつあるということです。性教育が変わるかどうかは,その教育内容を学校で導入するかどうかの判断によります(そのため,日本の性教育の変化はこれからということになります)
包括的性教育
「包括的性教育」,これが新しい性教育につけられている呼び方です。
何やらとても難しそうな感じがすると思います。”包括的”という言葉がどこかとても高度な,難しそうな印象を与えるかもしれません。
でもこの「包括的性教育」は,すごく簡単に言い表すと,”いろんな考え方を使って性について考えること“と言えます。
その結果,性というのは,単に性別による体の違いやセックスのことだけをいうのではなく,色々な側面があるのだと知れるのです。
いろんな考え方というと,例えば「性自認」「性別役割」「人権」「人間関係」「性欲」「性的指向」などなど,さらに他の視点もあると思います。
このような,たくさんの【性の見方・捉え方】を知ってより豊かで幸せに生きることを目指すものであるのです。
包括的性教育に教科書はあるの?
日本で私たちが学んできた性教育は,保健体育の中で扱われてきました。一部理科や生物とも繋がっているところはあったかもしれません。つまり,当時の性教育の教科書は「保健体育の教科書」でした。
ここで紹介した包括的性教育の教科書は,現在学校で配られたりしていません。そもそも,教科書という形で作られていません。
しかしながら,学校の先生や日本の教育を作っていく人たちには,包括的性教育を行っていくときには,こんなことを考えるといいよ,という概要的な説明の文書が与えられています。
それが,【国際セクシュアリティ教育ガイダンス】です。
このガイダンスは,ユネスコやWHOをはじめ,複数の国連の専門機関が作成したものです。
ガイダンスはあくまでも概要的なことを書くにとどめていて,実際に教育に活かすときには,各国の特徴に合わせて使うことを目指しています。
ですから,同じこのガイダンスを使いながらも,アメリカ,ヨーロッパ,中国,それぞれの国ではやり方に違いがあるのではないかと思います。
日本での包括的性教育はいつから?
では,日本ではいつから義務教育で包括的性教育が始まるのかと言いますと,まだわからないというのが現状です。
この「わからない」という言い方も,何か少し変われば性教育が変わるかもしれないというよりは,”一体いつになるんだろう”という悲観的な面が強いです。
日本では,性に関してネガティブな印象が強くあります。それゆえに,「性」を知ることが人生を豊かにするための知識や知恵とは認識されておらず,積極的に学んでいこうとする機運が高まりません。
セックスひとつとっても,卑猥なもの,恥ずかしいもの,大人がこっそりとやること,のようなイメージなのだと思います。
特にこれからは,防犯のために性を学んだりする機会が増えると思います。その結果,学び方に偏りが出てしまい,よりネガティブな側面が強調されるのではないかと心配しています。
おわりに
今回は,ちょっと昔の保健体育での性教育から,国際セクシュアリティ教育ガイダンスを使った【包括的性教育】という新しい性教育の形が近づいてきています,という話をしました。
義務教育における実現はなかなか難しいところがありますが,地域,企業,性教育の発信者の方々からこの包括的性教育を受けることはできます。ぜひ皆さんもどこかでこの包括的性教育を見つけたら,受講してみてください。
ゆるっと性教育